「海が見たくなったんだ・・・」

2014年03月27日 19:14

冷たい雨が昨日から降ってる。
傘をさすのさえもどかしい。
俺は一体
何処まで歩くんだろう。
穴の開いた靴に
水が入らないように
水溜まりを避けながら歩く。
赤と青のライト。
行き交うトラックに乗用車。
疲れ果て
家路を急いでるに違いない。

海を見たくなった。
昔、魚一匹棲んでいない
汚れた川を渡り、
流されたイカダ。
小学生の幼い俺達には、
最初の冒険だった。
トム・ソ-ヤみたいに輝いていた。
今は、どうだろう。
疲れきった体に鞭打って、
一歩ずつ歩く。
風が吹いても、嵐になろうとも
一歩ずつ。
今まで自分を甘やかした時期が
あまりにも長かった。
"そう思わないかい!?"
自問自答する。

海が見たい。
貨物船が停泊する海を。
連絡船から、
最後の乗客が降りてきた。
最終便のバスに乗り継ぎ
家路を急ぐ。
海が好きだ。都会の海が。
貿易船から
幾つもの大きなコンテナが、
何度となく降ろされる。
フォ-ク・リフトが蟻に見えてくる。
誰もいない海。
汽笛が俺の心を揺さぶる。
"準備は出来てるかい"
"出航~!"
いつか、
こんな貨物船の船底に隠れて、
世界中を旅してみたい。
勿論、ポケットの中はカラッポ。
それでもいいじゃないか。
夢は大きく。

雨は、
相変わらず降り続いている。
俺は、ゆっくり走りたい。
いや、歩きたい。
ヘッド・ライトが眩しいぜ。
無灯火の暴走自転車。
イヤ・ホ-ンを耳に突っ込んで、
携帯電話でメ-ルする女。
危ないぜ。
俺に突っ込む気かい!?
あんたから、
恨みを受けるような事を
した覚えは無いぜ。

海を見に行ったんだ。
破れた靴で、
雨が降る中、傘もささず。
でももう寒くない。 
俺には帰る家がある。

そこには
ドラマがある気がしないかい?
トレンチ・コ-トは持ってないけど、
ボロボロの皮ジャンと
ブル-・ジーンズなら持ってる。
古いタイプの男なんだ。
笑ってくれ、こんな無様な俺。
海を見たくてここまで来たんだ、
雨の中、傘もささず。