「メキシコ人化計画」
この野郎!
昨日はあんなに温かったとに。
いきなり寒くなって、
雨まで降りやがる。
おまけに風まで、
強いときてる。
直したばかりの
ガス・スト-ブ。
又あんたの出番だ。
昨日着たランニングを脱ぎ捨て、
洋服ダンスの中に手を差し込んだ。
"今日は何が出てくるのかな"
実は、それは俺の唯一の楽しみだ。
"お~セニョール穴井、お前か"
穴井はロドリゲス。
吉塚にある
アンティークショップの社長、
安部はフェルナンデス。
北九州の灘友はガルシャ。
東京の池畑は革命児パンチョビラ。
何で池畑だけ格好いいとや・・
はがいか!
なんでユル・ブリンナ-なんや!
はがいか!
で、俺がゴンザレス。
髭の中々濃い男は、
メキシコ人だと思っている。
もしも花田が髭を生やしても
メキシコ人には見えない。
森山しかり、北里も。
陣内・・・
今ひとつメキシコ人化してない
何故だろう?
柴山さん。
何も言えない。
マコちゃん。
尚更の如く・・・。
クラされるのではと思うと
メキシコ人化は打ち消される。
穴井のTシャツ。
ソンブレロを被って笑ってる。
タコスを食うのか!穴井。
お前にテキ-ラはおかしい。
似合わない。
下本地に任せとけ。
アイツもどことなく
メキシコ人に思えてきた。
20年程前、
独りNEW YORKに行った事がある。
後輩の大熊に会いに。
奴はそこで
BLUES BANDのBASSを弾いている。
俺以上のどうしょうもない奴で、
皆の反対も聞かず
本当にNEW YORKに行きやがった。
結婚したばかりの奥さんを置いて。
何年かのち
奴なりに成功して
奥さんと子供を迎え入れた。
そういえば奴もメキシコ人に似ている。
"ホセ・大熊!"
ぴったりだ。
俺も大熊もNEW YORKでは
一度も日本人に見られなかった。
NEWYORKに着いて
大熊から、
最初に連れて行かれたのが
確かグリ-ンビレッジの
メキシコ料理店だった。
その時、
俺は無性に涙が止まらなかった。
辛いタコスを頬張りながら
男泣きした。
文化の違いに。
それから俺は自分の心に誓った。
"メキシコ人になってやる"
スペインにお返ししてやる・・・。
何がなんだか分からないけど
20年前の俺はそう思った。
気がつけば、
メキシコ系日本人が
周りに沢山いる。
穴井、アミ-ゴ!
セニョリ-タは元気かい?
灘友、安部、池畑、大熊!
いちど穴井に
テキ-ラ飲ませないかんばい!
メキシコ系日本人として
恥ずかしい・・・。