「明日はきっと青空」

2014年10月15日 18:31

アノ娘は何十年前、
俺の後輩の彼女だった。
たしか「アケミ」と言う名前だった。
東京は国分寺の
ボロ・アパ-トで2人仲良く暮していた。
その時期
俺に東京でのLIVEが何本か決まった。
"狭い所やけど
良かったら山善うちに泊まったら?"


そんな具合で
後輩の三郎の家にお世話になる事になった。
奴は電報の配達をし
アケミは音楽雑誌のライターをしていた。
俺も奴らも、まだ若かった。
奴が仕事に出ると
アケミと二人になったが
色んな音楽を聞かせてくれた
特にアケミの好きな「HEATWAVE」を。

それから何年か経って
俺のRECORDINGが始まった。
三郎はピアノ弾きで
RECORDINGに参加。
勿論アケミも博多にやってきた。
RECORDINGのオフの時
2人で缶ビ-ルを提げて
俺のオンボロ・アトリエに遊びに来た事がある。
三郎は言った。
"山善、
今の時代、大人が光り輝いていないと思わない?
大人が疲れ切ってるから、
子供たちは大きくなっても
面白い世界は来ないって思うんじゃない?
だから俺達が好きな事して
光り輝いていなきゃ!
好きな事をやろうじゃないか!ねぇ山善!?"

先日の熊本のLIVE。
台風が接近
HOTELから出る事も出来ずテレビをつけた。
NHKの講談の独演会の中継があっていた。
睡魔と闘いながら何気なく見ていると
アナウンサ-が言った。
"それでは、
今年真打になった4方を紹介します"
画面には男が2人女が2人並んでいた。
二番目の髪の短い講談師が挨拶をし、
顔を上げた瞬間、
俺は思わずBEDから跳ね起きた
"アケミだ!いつのまに講談師に!!"

前々からアケミが
講談師の弟子入りをしてるらしいと
言う噂は聞いていた。
思わず胸が熱くなる感じがした。
"おめでとう!"
継続は力なり。

三郎は知ってるんだろうか?
何か物凄く元気をもらった気がした。
アケミは今
講談師の世界の入り口に立っている。
俺も還暦を迎え
再びエンジンのギヤを入れ直す、そんな時
見知らぬ町のHOTELで
何十年前に知り合ったアケミの晴れ舞台を見た。

HOTELを出ると風はただ強くなるばかり。
今夜もひと荒れ来そうだ。
でも俺の心はなんだか軽かった。
明日はきっと青空が戻ってくる
そう信じて...。